ペンダントトップ制作「ピーターサイト」

今回は、まるで宇宙から眺めた地球を閉じ込めたような「ピーターサイト」を使ったペンダントトップの制作工程を5ステップで紹介します。
彫金でペンダントを作る流れの参考になればと思います。
深いブルーの中に、大地を思わせるゴールドやブラウンが渦巻くこの石は、地殻変動によって一度砕かれた結晶が再び結びついて生まれたもの。そのドラマチックな成り立ちから「嵐の石(テンペストストーン)」とも呼ばれます。
硬度: 6.5〜7(比較的丈夫)
和名:「角閃石(かくせんせき)入り石英」
ピーターサイトとは:タイガーアイやホークスアイが地殻変動により細かく砕けクオーツによって固められた鉱石
「ピーターサイト」ペンダントトップ制作工程
制作工程を5ステップで説明します。
STEP
各ステップの解説
Step 1:石枠(座)の土台作り

まずは作品の主役、ピーターサイトに合わせた石枠を作ります。石の高さに合わせてローラーで引いた0.7mm厚の銀板を、石の周囲に添わせていきます。
石の「地球のような模様」が一番美しく見える向きを確認しながら、カットする位置は丸カンのロウ付け位置を避けて決めます。糸鋸とヤスリでピタリと合わせてロウ付けします。
Step 2:石枠と裏板の接合・成形

枠が完成したら、土台となる裏板にロウ付け(溶接)して「箱」の形にしていきます。隙間なくロウ付けができたら、糸鋸(いとのこ)を使って枠の形に沿って余分な銀板をカット。
ここでしっかりと接合しておくことが、ペンダントとしての強度、そして仕上がりの美しさに繋がります。

この後、裏板の真ん中を抜く作業に入ります。石に光を通し、さらに着け心地を軽くするための大切な一工夫です。
Step 3:バチカン(紐通し)の制作と連結

ペンダントを首から下げるための「バチカン」を作ります。今回は少し厚めの銀板を選んだため、丸めて形を整えるのに一苦労しましたが、その分、市販品にはない「ぽってり」としたボリューム感のあるフォルムに仕上がりました。
銀の質感がしっかりと感じられるバチカンは、地球のような力強いピーターサイトとも相性抜群。この後、本体に連結するための大切な「顔」の一部になります。

バチカンのロウが溶けないよう砥の粉で防ぎます。
Step 4:下地研磨と石留めの準備

まずは石を留める前に、全体をバフ機(※)で磨き上げます。石が収まってからではバフが届かなくなる細かい隙間や、バチカンの裏側まで、この段階で鏡面に仕上げておくのがポイント。
制作中の小キズが消え、銀本来の美しい輝きが引き出されるこの工程は、ジュエリーに命が吹き込まれる瞬間のようで、何度やっても心が躍ります。
※高速回転する円盤状の「バフ」に研磨剤(コンパウンド)を塗り、金属の表面を磨いて鏡面光沢を出す表面処理です。

全体を磨いた後は、石をセットするための最終調整です。ピーターサイトの高さや形に合わせて、石枠の縁(ふち)をヤスリで慎重に削っていきます。
この「石留め前のひと手間」を丁寧に行うことで、最後に地金を倒した時のラインが均一になり、仕上がりのクオリティが格段に上がります。
Step 5:石留めと最終仕上げ

いよいよピーターサイトを枠に収めます。これまで丁寧に調整してきた石枠に、石が吸い込まれるようにピッタリと収まる瞬間は、何度経験しても最高の快感です。
まだ地金を倒す前ですが、銀のフレームに縁取られたことで、石の中の「地球のような模様」がいっそう鮮やかに引き立ちます。

石が動かないよう、タガネとオタフク鎚を使って少しずつ石枠の縁を倒していきます。一箇所に力が偏らないよう、慎重に叩いていくのがコツ。
地金が石のカーブに沿って密着していく様子は、まさに作品が「完成」へと向かう鼓動のようです。この後、叩いた跡をヤスリで整え、最後のバフ掛けで仕上げていきます。
完成

最後のバフ仕上げを終え、ようやく一つのペンダントが完成しました。
太陽の光の下で改めて眺めてみると、ピーターサイトの中に閉じ込められたブルーの渦が、まるで本物の海のように深く、静かに輝いています。地殻変動という激しい過去を持つ石が、こうして穏やかなジュエリーとして生まれ変わるプロセスは、制作している私自身にとっても癒やしの時間でした。
苦労して丸めた厚みのあるバチカンも、出来上がってみればこの石の力強さをしっかりと支える、頼もしいデザインのアクセントになってくれました。
彫金は工程が多く、時に力も必要ですが、板の状態から自分の手で形を変え、最後には世界に一つだけの輝きに出会える。この喜びがあるからこそ、また次の作品へと手が動いてしまいます。
今回の「地球のペンダント」制作にお付き合いいただき、ありがとうございました。 次回は、また違った創作についても綴っていければと思います。
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